幻水ニーベルング・第一話
 

文字色は…

ほぼオペラ原作通り
原作から逸れている
銀丸のツッコミ

となっております。

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 竜を倒し、ジョウイ(ジークフリート)は今日の記念にと竜が守っていた宝の中から黒き刃の紋章(ニーベルングの指環)を選んで身に付けました。
 森の中で育ったジョウイは養い親のミーメ以外に話し相手もおらず、しかもミーメが自分に愛情をもっていないことを感じていたのか、彼のことが大嫌いでした。そしてミーメも死んでしまった今、ジョウイはたいそう淋しかったのです。
 そこへ小鳥の声が聞こえてきました。ジョウイは竜の血を飲んだために小鳥の言葉が分かるようになっていました。
 小鳥は、炎の岩山に美しい乙女が眠っていることを歌っています。ジョウイは居ても立ってもいられなくなり、小鳥に導かれてユーナクリフ(ブリュンヒルデ)の眠る岩山へとやってきたのでした。
 そこに目深に帽子をかぶったナナミ(ヴォータン)が現れます。

ナナミ「やっぱり帰ってきたね!」
ジョウイ「(いきなり脱力)……ナナミ、ミューズの市門じゃないんだから……」
ナナミ「あ、いっけなーいセリフ間違えちゃった〜。ジョウイが遅いから忘れちゃったよ!ナニやってたの?」
ジョウイ「……竜を殺したりとか、養い親を殺したりとかね……」
ナナミ「なんか血なまぐさいなぁ……」
ジョウイ「大体、なんでナナミがヴォータンなんだよ」
ナナミ「わたしがユノの保護者なんだから当然でしょ」
ジョウイ「…………」

気を取り直して。

ナナミ:「ええと……若者よ、お前はどこへ行くのかね」
ジョウイ:「火に囲まれた岩山を探しているんだ。そこには乙女(…)が眠っているという。僕は彼女を起こしに行くんだ」
ナナミ:「あ、あそこ。あの明るいあたりだよ〜。ユノが待ちくたびれてるから早く行ってあげてね」
ジョウイ:「ありがとう。―――って、いいのかそれで!僕はここで君と対決するんだろ!?」
ナナミ:「え〜いいじゃない、どうせ通すことになるんだから」
ジョウイ:「……今からこれじゃあ先が思いやられるよ……」

 気にするな。大雑把すぎるヴォータンも間違ってるケドそもそも「頭でっかちでマジメ君のジークフリート」というのがミスキャストだろ。
 ナナミを後に残してジョウイは先に進みます。すると炎燃え盛る岩山に辿り着きました。この炎は恐れを知らぬ英雄以外の男を通すことはないのです。
 しかしジョウイが足を踏み入れた途端、炎は引いて青空が現れました。
 ジョウイはまだ見ぬ花嫁(笑)に胸をときめかせながら荒野を進んでゆきました。

ジョウイ:「もみの木の陰でなにが眠っているんだろう。あれは馬が眠っているのか……」
トリスラント:「……なんで僕が馬なんだろうね……」
ジョウイ:「うわっ!お、起きて……」
トリスラント:「ねえ、なんでこの僕が馬なんて。トランの英雄を捕まえておいていい度胸だよね……」
ジョウイ:「僕に言わないで下さいよ!」

 いや、その、ほら、グラーネはブリュンヒルデの愛馬でいちばんのお友達だしさ……

グレミオ:「そうですよまったく、坊ちゃんが馬だなんて無礼千万!!坊ちゃん、このグレミオが代わって差し上げますとも!ヒヒーン!!」
トリスラント:「……もういいよ、行けば?」
ジョウイ:「……そうさせてもらいます……」

 あたりを見回すと、ジョウイはひとりの人間が横たわっていることに気付きました。

ジョウイ:「おや、武装した男が眠っているのか……武装に押さえつけられていて苦しそうだな。この兜を取ってやれば楽になるだろう」

 そっと兜を外してやると、顔があらわになりました。
 ジョウイはその美しさに……美しい?……いや、その可愛らしさに……ドキドキしました。

ジョウイ:「この窮屈そうな鎧も外してやろう……」

 ジョウイは注意深く鎧の留め金を切り、胸当てを外しました。すると薄布に包まれた豊かな胸が……どこにあるんだよ……

ジョウイ:「これは男じゃないぞ!」

 男だってば!!(爆)
 本人が聞いたら殴られるぞ。
 女性を知らなかったジョウイは(もういいよ……)すっかり動転してしまいました。この人こそが小鳥が教えてくれた眠れる花嫁、ユーナクリフだったのです。

ジョウイ:「この不安な気持ちは何なんだ!僕は臆病者になってしまったのか!?ああ、切なくて気が狂いそうだ!」

 ……ジョウイが言うとシャレにならない気がする。

ジョウイ:言ってる僕も恥ずかしいよ!!……どうしたらこの人を目覚めさせられるんだろう?」

 悩んだ末にジョウイは古典的な手を使うことにしました。

ジョウイ:「いや、でもさあ……眠っている時にキスなんて……ユノのことだから絶対怒るよ……」

 ……いいからさっさとやりなさい。
 ジョウイは意を決して唇を重ねました。
 長く感じられる時間が過ぎた後、ユーナクリフは修行の手を止め……もとい、ぱっちりと目を開きました。驚いて身を引いたジョウイに、彼はきょとんとして口を開きました。

ユーナクリフ:「君は?」
ジョウイ:「ぼ、僕はジョウイ……」

 違うけどまあいいか。

ユーナクリフ:「僕の盾があそこに……僕の兜も……」
ジョウイ:「君が僕の心を蝕んでしまった……岩山の炎は僕の胸に燃え移ってしまった。僕の胸を焦がすこの情熱をどうか消してください(もうヤケ)
ユーナクリフ:「僕の鎧も君が引き裂いてしまったんだね……このヘンタイ!!
ジョウイ:「どうか僕の妻に……って、はあ?なんだよヘンタイって!?」
ユーナクリフ:「そうだろ、寝てる間に脱がせるなんて!」
ジョウイ:「窮屈そうだから緩めてあげようと思っただけじゃないか!……じゃなくて!!そういう話じゃないだろ!?」

 でも間違ってもいないような。

グレミオ:「いいんですかアレ、放っておいて」
トリスラント:「いいんじゃない?それよりお腹すいたなぁ」
グレミオ:「はいはい、お弁当ですね」

 傍から見れば単なる痴話ゲンカだからねぇ(原作からして……)

ジョウイ:「とにかく!僕は君を愛しているんだ!僕と結婚してくれ!!」
ユーナクリフ:「……う、うん……なんか押し切られた気分だけど……ジョウイのことは好きだし、まあいいか」
ジョウイ:「ほ、ほんと?」
ユーナクリフ:「本当だよ……ジョウイがいればワルハラが滅ぼうがどうしようがどうだっていいさ

 ようやくラブラブになったジョウイとユーナクリフは熱い抱擁を交わしました。
 しかしこんなところばっかり我が家の主人公にそっくりだな、ブリュンヒルデ……。

ジョウイ:「……いいのかなぁ……」
 


 

第二話に続く。