幻水ニーベルング・最終話
 

文字色は…

ほぼオペラ原作通り
原作から逸れている
銀丸のツッコミ

となっております。

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 薪の山は神聖な祭壇のようにしつらえられました。夜の帳の中に何本ものたいまつが燃え上がり、人々は息を呑んでジョウイの亡骸と彼に寄り添うユーナクリフを見つめています。
 ユーナクリフはそっとジョウイの右手を取りました。そこには黒き刃の紋章が輝いています。アルベリヒの呪いを受けて輝くその紋章を見つめ、神々が欲に駆られて犯した罪をユーナクリフは嘆き……

ジョウイ:「ユノ……君の右手を……」

 ……死んでたんじゃなかったか、アンタ?

ジョウイ:「早く……このままでは君まで……」
ユーナクリフ:「ジョウイ!そんなこと……できないよ!!」

 あのー……

トリスラント:「なんか錯綜してるなぁ……」

 ジョウイの最期の願い(だからもう死んでるはずだろっ!)をユーナクリフは拒み続けます。
 そのとき、ひときわ強い輝きが紋章から放たれました。

ジョウイ:「こ、これは……体が癒されて……!?」
レックナート:「あなた方の想いが紋章の力を超えたのです……」

 レックナート様……出番早すぎ……。

レックナート:「ジョウイ、あなたのもつ黒き刃の紋章は、かつてラインの川底で輝いていた黄金。それから紋章を作ることは愛を呪うことによってしか成らなかったのです。アルベリヒは愛を呪い、紋章を作り上げてしまいました……」

 その設定は原作通りだけどさあ……

レックナート:「ユーナクリフ、あなたの輝く盾の紋章……すなわちあなたの『愛』がアルベリヒの愛の呪いに打ち勝ち、『始まりの紋章』へと昇華させたのです……さあ、お行きなさい……」
トリスラント:「すっかり陶酔してるな、レックナート様……」
グレミオ:「うぅっ……そうです、愛は尊い……(ぐすぐす)」
トリスラント:「グレミオ、おまえまでつられてるんじゃないっ」
ユーナクリフ:「……え、ええと」
ジョウイ:「……このオペラって、ぶっちゃけた話が心中モノじゃなかったっけ?……どうする?」

 もう好きにしてくれ。こんな話ではなかったはずなのに。

トリスラント:「トンズラするしかないんじゃない?」
グレミオ:「坊ちゃん!またそんな言葉づかいをして……!」
ユーナクリフ:「じゃあ、ええと……ト、トリス……僕と一緒に来てくれます……よね……」
トリスラント:「はいはい……これ使ってね」

 トリスラントがジョウイに手渡したのは、火打石と、油のついた布と、ロープでした。

ジョウイ:「…………混乱してきた……」

 書いてるほうももうわけわかんないです。
 薪の山に火が付けられると、勢い良く燃え上がりました。

ジョウイ:「……これって、僕の遺体を焼くための火だよね確か……」
ユーナクリフ:「カラスよ、お前の主人のもとへ飛んでゆけ!そしてあの岩山で今も燃え盛る炎(ローゲ)にワルハラへ行けと伝えて!」
ナナミ:「えーちょっとぉ、お城まで燃やされちゃ困るじゃないのぉ」
ユーナクリフ:「……ナナミぃ(がっくり)……カラスの主人が、なんでここにいるんだよ」

 炎は勢いを増してゆき、神々の居城ワルハラにまで届こうかとしています。そこへライン川の水が押し寄せてきました。ラインの乙女たちが紋章を受け取りにきたのです。
 とはいえ、みんな逃げ出しちゃってるので受け取るも何も……。

ルカ:「待て!!紋章は俺のものだぁぁ!!!」

 ルカはラインの乙女たちが来たことを知って顔色を変え、押し寄せてくる水の中に飛び込みました。

トリスラント:「ああ、ねえ、馬ってそういうこと?」
ユーナクリフ:「は?」
トリスラント:「ひとの恋路を邪魔するヤツは……」
ユーナクリフ:「そ、そんなまさかぁ(冷汗)」
グレミオ:「大丈夫ですよ坊ちゃん、その役はレックナート様がやって下さいますから」
ユーナクリフ:「……と、とりあえず逃げようよ〜」

 水に飲まれ(…てないってば)てゆく紋章を追ってしぶきをあげるルカは、ラインの乙女達によって深みへと引きずり込まれてゆきました。でもルカ様しぶといから、どこかに流れ着いていそうな気もする……。
 神々の世界は盛大な炎とともに崩れ落ちてゆきます。

ジョウイ:「…………」
トリスラント:「……ま、こんなもんだよね」
ユーナクリフ:「……えと……し、幸せだからい……っかなぁ、なんて(ジョウイにしがみついている)」
ナナミ:「そうそう、やっぱりハッピーエンドが一番よね〜」

 オーケストラは荘厳な愛のテーマを奏でます。
 神々の世は燃え尽き、その灰の中から、愛による真に幸福な人間の世界が造られてゆくのです……。

ジョウイ:「……いいのかなぁ……」
 

 ……終っちゃえっ!!
 


 

…お疲れ様でした。