Eat me?



 
 
 
 
 
 
 



「ニンジン食べるかい?」
 そう言って、ジョウイがニンジンを残した皿を差し出す。
 やれやれ、またかと思って、僕はそれを受け取ろうとした。
 なんだか知らないけど、ジョウイはニンジンが嫌いなんだ。
 確かにくせのある野菜だから、好き嫌いが別れるとこかもしれないけど。
 そういう意味では、恵まれた家庭に育った副産物とも言えるだろう。
 ちなみに食べ物には恵まれていたかもしれないが、愛情に恵まれた家庭環境だったなんて、塵ほども思わない。
「まったく。いつまでも好き嫌いしてるから、ジョウイは細いんだよ」
 背だけはそこそこあるくせに、いつまで立っても筋肉のつかない身体を揶揄して言う。
「…ニンジンくらいじゃ、成長にあまり関係ないよ」
 焦ったように反論してくるジョウイが可愛い。
 自分より身体の大きいジョウイを、可愛いだなんて表現するのはおかしいのかもしれないけど。 
 でも、僕だってそのうち大きくなるし。
 いいよね。
「栄養あるんだから、関係あるよ」
 そう言ったところで、ジョウイのニンジン嫌いが直るわけでもなく。
 僕は渡された皿のニンジンを片付けていく。
 ここの料理は、この砦のボスがビクトールなんだなぁと実感させてくれる味。つまりは、滅茶苦茶大雑把。
 でもけっこう、僕の舌には合うらしい。
 もっとも、自分の舌が肥えてるなんてカケラも思ってないけどね。
 これって悪食って呼ばれるのかな。
「はい。美味しかったよ」
「……そ、そう」
 ジョウイがちょっと退いてるところを見ると、どうやら彼の口には合わないらしい。
 その点、僕は苦労したことがない。ナナミの手料理の賜物、とでも言うのだろうか。
「ダメだよ。選り好みしてちゃ。大きくなれないって」
「そんなこと言う君だって!」
「僕は出されたものは何でも食べるもの」
 大きくなれないのは、食べ物のせいじゃない。それに、まだ成長期に入ったばかりでは、大きくなるかならないか、なんてわからない。
「さて、と」
 かたんと床に皿を置く。
「ニンジン、だけ?ジョウイが食べて欲しいのは」
 くすっと笑うと、ジョウイが真っ赤になった。
「…な、何を言い出すんだ、君は!」
「何って?」
 にこにこ笑うと、ジョウイが視線の置き場に困って、目をさ迷わせた。
「こんなこと?」
 ついと顔を寄せて、ジョウイの唇を奪う。
 そのまま、肩を引き寄せて、口付けを深いものへと変えていった。
「…んーーっ」
 どんどんと背中を叩くジョウイの手。息が出来なくて苦しいのだろう。
 でも離してなんかやらない。
 きつく舌を絡めて、思うさま貪ると、やがてジョウイの抵抗が弱くなっていった。
「…はぁっはっ」
 長いキスの後、ようやく解放してやると、ジョウイが酸素を求めて喘いだ。
 うっすらと涙を浮かべているジョウイのその苦しそうな表情が、僕の情欲を煽る。
「ジョウイも、期待してた?」
 わざと意地悪くそう言うと、ジョウイの瞳が動揺にゆらめいた。
「可愛いね、ジョウイ…」
 くすくす笑いながら、その服に手をかける。
 上着を脱がして、胸の尖りを口に含んだ。
「…はっ…あぁっ」
 びくんとジョウイの背が撓る。
 腰が浮いたところで、ジョウイのズボンを脱がせてやると、すでにそこは熱く立ちあがっていた。
「ジョウイも欲しかったんだ…」
 僕もだよ。
 耳朶を甘く噛みながら、ジョウイの耳へと甘く囁いてやる。
「……あ…ぅ…」
 うっすらと涙を溜めた瞳が、縋るように僕を見つめる。
 その瞳に促されるように、ジョウイの刺激を求めて震えているもに、指を絡めた。
「あぁ…っ」
 びくんびくんと反応して、白濁したものを僕の指へと吐き出す。
「早いね…」
 わざと見せつけるようにして指についたものを舐め取れば、ジョウイの顔が羞恥に染まる。
「舐めて。傷つけたくないから」
 指を差し出せば、おどおどした表情で、僕を伺うように見つめる。
 黙ったままの僕に、やがて諦めたように指に舌を這わせだした。
 ちろちろと赤い舌が見え隠れするのに、たまらなく煽られる。
「…もういいよ」
 ジョウイの唾液で十分湿らされた指を、彼の後口へとあてがう。
 そのままずるっと、その指を飲み込ませた。
「ひ…はぁっ」
 背が限界まで反らされる。
 なだめるように背中を撫でてやりながら、指を増やしていった。
 時間をかければ、やがてそこは指だけでは物足りないとでもいうように綻んでくる。
 ぐちゅぐちゅと卑猥な音を立てはじめたそこに、僕は自分をあてがった。
「………はっ」
 次に来るであろう刺激に、ジョウイが息をつめる。
 そんなジョウイに、優しくキスを落としてから、僕は彼の中へと自分を進めていった。
「あぁぁ……っ」
 涙を振り散らせて、ジョウイが声を上げる。
 自分の下で、ふるふると震える身体が、たまらなく愛しい。
 痛みにか、萎縮してしまったそこに指を絡めてやると、ぴくりと反応を返す。
「…動くよ」
 声をかけてから、動き出した。
 最初はゆっくり。
 そのうちに、我を忘れて、彼を貪る。
「…あっあっあああっ」
 濡れた瞳は、焦点を結ばず、ただ揺さぶられるままに、快感に涙する。
「ジョウイ…っ」
「あぁぁぁああ……っ」
 絶頂へと達する時に、背中に立てられる爪の痛みすら心地よい。
 きつく締めつける中の感触を味わいながら、ジョウイの中へと思いを注ぎ込んだ。

 行為の後、気を失ってしまったジョウイの髪を梳きながら、僕はそっと微笑む。
「…ジョウイ」
 ジョウイの髪を梳くのは好きだ。
 彼の細い白金の髪は、逃すまいとでもするように僕の指へと絡みつく。
 それは、何も言わないジョウイの心を、代弁してくれているような気がして。
「…ジョウイ。好きだよ」
 その言葉に、意識のないはずのジョウイがちょっと笑った。
 嬉しくなって、ジョウイを抱きしめて、毛布にもぐった。
 そのまま瞳を閉じる。
「…明日起きたら、朝一番に見るのは、ジョウイの顔だね」
 そんなこと考えてたら、すごく幸せな気分になった。
「おやすみ、ジョウイ…」
 君がここにいる。
 それだけで、こんなに幸せになれるんだ。
 
 
 
 
 
 

 



 
 
 

主ジョウ部屋開設おめでとうございます!

ってことで開設祝いに貰いました。
ありがとうございます〜。えへへへ。幸せですぅぅぅ(高速回転中)
「ニンジンたべるかい?」ってノックアウトもののセリフでした。銀丸には。ふふ。

by銀丸
 
 

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