「…あ…っ」
身体をまさぐられる感触に、ジョウイが声を上げる。
「や…だって……っ」
「どこが?身体は嫌がってないよ」
言いながら、イオはジョウイに這わせる手を止めない。
「…やだ…って!僕に触るな!」
「どうしたの?ジョウイ」
本気で嫌がるジョウイに、さすがに手を止めるイオ。
「もうここの生活にも慣れただろう?僕、一週間も待ったんだよ?」
確かに、ジョウイも捕虜となって一週間。イオはジョウイに手を出してこなかった。
ビクトールが二人のために、新しい部屋を用意してくれたため、いつだってその機会はあった。
ナナミは女性部屋に寝泊りしているので、イオとジョウイだけで、その部屋を使えることになったのだから。
ジョウイと同室になったのに、イオは全然手を出してこない。
「…でも、嫌なんだ」
「どうしてだよ、ジョウイ?」
普段なら、一日と開けずに求めてくるのイオが、全然手を出してこなかったのは、自分の身体の心配のためだったと。
それは嬉しいんだけど。
素直に喜べない自分がいることを、ジョウイは知っていた。
「…だって、僕は知ってるんだ」
ジョウイはきっとイオを睨む。
「君、色々な人に手を出してるだろう」
その言葉に、イオはきょとんと、首をかしげた。その他愛のない仕草がかわいらしい。
「…手を出す?なにが?僕にはジョウイだけだよ」
「嘘つき!だって…色々な人と寝てるじゃないか」
「あぁ。そういうこと」
悪びれずにさらっと認めるイオに、ジョウイはさっと青ざめた。
しかし、イオは気にせず続ける。
「あんなのただの運動じゃない」
そこに反省の色など、かけらもない。いや、彼には浮気したという感覚はないのだろう。
ましてや、それがジョウイを裏切ってる行為だとか、傷つけてるとか、考えてもいないらしい。
「ポールさんだって…あまつさえ、ビ、ビ、ビクトールさんにまで手を出してるって聞いたよ、僕は!」
誰だよ、こいつにそんなこと吹き込んだのは。
そうは思っても顔には出さず、にっこりと笑いかけた。
「…ねぇ、ジョウイ」
天使のようなあどけないその笑顔に、ジョウイはうっと言葉につまる。
「僕は悲しいよ、君は僕を信じられないのかい?」
「…イオ?」
「例えこの身に何があろうと、今生で愛を誓ったのは君だけさ」
悲しそうに目を伏せて、捨てられた子犬のような瞳でジョウイを見上げる。
「……イオ」
そんなイオに、ジョウイは言葉をなくす。
「誰と何をしていても、いつでも君だけを思ってる」
「…でも、でもね」
「信じて!僕は、いつだってジョウイだけを思ってるんだよ」
真摯な瞳で、じっと見上げてくるイオに、ジョウイはついつい流される。
毎度同じ手にひっかっかっているとはわかっていても、この瞳を見てしまうとジョウイは何も言えなくなるのだ。
「……イオ…」
「黙って…」
「…ん」
優しく唇をふさがれて、ジョウイは思わず瞳を閉じた。
歯列を割り、口内に伸びてくる舌に翻弄される。
「…ふ…はぁっ」
長い口付けからようやく解放された時には、ジョウイの息はすっかり上がってしまっていた。
潤んだ青灰の瞳には、うっすらと涙がたまっている。
「…ん。まだ話し…終わって…な…」
「君に無理させちゃ悪いと思って……」
寂しかったんだ。
耳朶を甘噛みしながら、そう囁くイオの声に、ジョウイはぼぅっとなった。
「……ね?ジョウイ…」
身体を滑っていくイオの指先に、ジョウイの意識はさらわれる。
そんなジョウイに、イオは喉元でくすっと笑った。
「きれいだよ、ジョウイ…」
ジョウイの肌は上気し、普段は血の通わないのではないかと思われるほど白い肌が、うっすらと朱に染まっている。
イオはそこに一つ一つ、紅い花を散らしていく。
「…はぁっ…あんっ」
花が増えるたびに、ジョウイの白金の髪が揺れ、甘い声がその唇から零れ落ちた。
その声に誘われるように、イオは愛撫の手を強める。
「…ん…ぁ…イオ…っ」
花芯を包んでやると、ジョウイの身体が弓なりに撓った。
彼自身では見えないようなきわどい足の付け根にまで、跡をつけると、イオは満足そうに微笑んだ。
「僕の愛する人は…君だけだよ……」
「……んぁ…あっ……」
固く閉じた蕾を、無理やりこじあけるようにして身体をすすめる。
がたがたと痛みに震えるジョウイの身体を、なだめるように背を幾度も撫でさすると、段々とジョウイの身体から力が抜けていった。
「ジョウイ…」
「…は…っ」
ジョウイの身体が慣れた頃を見計らって、動き出す。
幾度も内壁を擦られる感触に、いつしかジョウイも腰を動かしていた。
汗でしっとりしている白金の髪を掬い取り、口付ける。
「…君だけを、愛してる」
腕の中でかたかた震えるジョウイに、限界を感じ、イオは腰の動きを早めた。
一際強く突いてやると、泣き声が高くなり、ジョウイの身体がびくんと跳ねる。
「んあぁぁぁ…っ」
白濁を解放し限界までのけぞるジョウイの身体を抱きしめて、イオはジョウイの後を追った。
「…ん…ジョウイ…」
「……あ…ぁ…」
ひくひくと余韻に震えているジョウイを抱きしめたまま、イオはくすくすと耳朶を甘く噛む。
「良かった?」
「…イオ!」
真っ赤になって照れてるジョウイに、優しいキスを一つ。
明日の仕事は、自分がジョウイの分もやることになるのかな、と思いながら、イオは眠りについた。
そして数日後。
今日も元気にイオの声が、傭兵隊の砦に響き渡る。
「あ。ポールさぁん!今晩行くからねー」
「……げっイオ!?」
真っ青になったポールに、にこにこと手を振るイオ。
そしてそこに走り寄る、怒りで真っ赤になっているジョウイ。
にこやかなイオの笑顔はいつものこと。
「イオ…っ!!」
「だから、心はジョウイだけだってば」
「そういう問題じゃないだろっ!」
まったく反省していない様子で、しかし、電光石火の勢いでジョウイに近づき、手をぎゅっと握る。
「テクニック磨いて、もっともっとジョウイを喜ばせてあげたいんだ!」
真剣な顔で、そうのたまるイオ。
喜ぶじゃなくて、悦ぶじゃないのか、とか思いつつも、まわりはつっこみをいれない。
「…そうなんだ…え?」
ジョウイは一瞬ほだされかけ、はっと気付く。
「じゃなくて、イオ!こないだ言ってたことと違うじゃないか!」
僕が相手しなくて寂しかったからって、言ってたくせに!
「あ。ビクトールさぁん!昨夜はお世話になりましたー♪」
聞いちゃいない、さすがは主人公。
「イオ〜〜〜〜っ!?」
ジョウイの怒りの鉄槌をひらひらとかわしながら、楽しそうに笑うイオ。
そんなこんなで、捕虜生活を満喫している主人公だった。
オチもなく終わり。
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