ヒュークリBBS連載
お絵かきBBSにて連載していた超いきあたりばったりSSです。
(連載期間2003/11/16〜2005/1/15)
第1話
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第2話
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第2.5話 待ち合わせのレストランに来たヒューゴは瓶を手に悩んでいた。 我が身の安全を考えるなら、この薬は絶対に捨てた方がいいと思う。 そうは思ってもなかなか躊躇いを振り切れないのは、ロディが言った『背が高くなる』という言葉のせいだ。 真実性はめちゃめちゃ低いが、もしも、一千万が一にも本当に効果があったりしたら……? 瓶を見つめて唸るヒューゴの耳に、待ち望んでいた声が聞こえてきた。 「待たせたな、ヒューゴ」 喜びに顔を輝かせ、振り返ったヒューゴが見たもの、それは…… |
第3話
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第3.5話 「そんなことないよ!すごく似合ってるよ」 ヒューゴはぶんぶんと首を振った。 普段見慣れない、お嬢様らしいクリスの姿は新鮮だったし、なにより自分のためにあのお堅い騎士団長が女性らしい姿を選んでくれたのだから、嬉しいことこの上ない。 「そ、そうかな……」 照れているのかうっすらと頬を染めているのも可愛らしいと思う。 ああ、今日というこの日にデートができて良かった。ヒューゴは幸せを噛み締めた。 「ところで、ヒューゴ。その瓶は何なんだ?」 「…………」 幸せに緩んでいた顔が瞬間的に凍りついた。 |
第4話
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第4.5話 そこへ悲鳴を聞いて駆けつけてきた複数の足音。 「クリス様っ!」 「クリス様、大丈夫ですか!?」 「さあ、このタオルをお使い下さい……」 金属ががちゃがちゃ鳴る音に、ヒューゴはげんなりした。 ゼクセンの誉れ高き六騎士(と、騎士団長の従者)が、仕事も放り出して何をしているのだか。 この人たちは……絶対どこかに隠れて様子を伺っていたに違いない。もちろん『銀の乙女』とのデートに、それくらいの障害がないはずがないと分かってはいるけれども。 体格の良い男たちに見下ろされてヒューゴは憮然としていたが、とにかくクリスと二人きりになれるように、どうにかこの包囲を突破しなければと周囲に隙を探す。 そのとき、ヒューゴの胸元をがしっと掴む手があった。 |
第5話
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第6話
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第7話
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第8話 激しく揺れる視界に、手も足も出しようがない。 耳元で聞こえる息遣いがだんだん苦しげになってきて、ヒューゴは不安に駆られた。 「だ、大丈夫!?クリスさん!いったい、どこに、行くつもりなんだよ?」 「……、……こ……っ」 クリスの呼吸は声になりきらない。 「え、何!?」 その瞬間向けられた瞳は怖いくらい切迫した鋭い光を放っていた。 「二人っきりになれるところだ!!」 とても普段の彼女からは考えられないとんでもない発言に、ヒューゴの思考が停止する。 そのため、危険を察知するのが遅れた。 「あ、危ない!」 クリスは開放されている勝手口から城の内部に入ろうとしたのだろう。しかしあまりにスピードがつきすぎていたため、軌道修正がきかなかったようだ。 警告は間に合わず、二人はこの間補修されたばかりの城の壁に、ヤザ平原のイノシシもかくやという勢いで思いっきり突撃したのだった。 ヒューゴは肩やら腕やらをしこたま打って、芝生の上に投げ出された。 「いってぇ……!」 くらくらする頭を振って目を上げると、隣にクリスがのびていた。とっさにヒューゴをかばった挙句頭から壁につっこんでしまったようだ。 「うわーっ!?クリスさん、しっかりしてくれよ!!」 |
第9話 ヒューゴは痛む身体に舌打ちしながらクリスに這い寄った。 「クリスさん!」 呼びかけても、返ってくるのは呻き声だけ。クリスはすっかり目を回しているようだ。 そっと銀の髪をかき分けてみれば、立派なタンコブができている。 偶然にも周囲に人はいなくて、手助けもなくて困ると言えば困るし、こんな間抜けた異常事態を吹聴せずに済んで良かったと言えば良かったのか。結論の出しようもない状況に情けない気分でヒューゴはどうにかクリスを助け起こした。 フラフラしている彼女に肩を貸してよろけつつ城の中に入る。 本当は格好よく横抱きに抱え上げていきたかったのだけれど、打った腕が痛かったのと、体格差が邪魔をした(おそらくこっちが理由のほとんどを占める、というのは認めたくないのだが)ので諦めた。 「うぅ〜…頭が痛い…」 「大丈夫?すぐに医務室に着くから」 なるたけ優しく話しかけたが、クリスからぼそぼそとはっきりしない声で抗議が上がった。 「……嫌だ……」 「え?」 「二人っきりになれるところに行くんだって言っただろう?」 「……」 どうしたもんだろう。ヒューゴは途方に暮れて天を仰いだ。 |
第10話
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第11話
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第12話 一方、その頃誉れ高きゼクセンの騎士(見習い)は元凶となった少年の居所をようやく突き止めたところだった。 魔法使いの弟子は師匠のいいつけをごく素直に実行し、『水魔法の強化のため』城の裏にある池に竹筒を咥えて潜っていた。発見したとき、ルイスはどれだけ筒の上部を塞いでやろうかと思ったか知れない。が、そうすると肝心なことが訊けなくなるので渋々ながら水を掛けるだけに留めた。 「ぶはぁっ!!ひどいなあ、溺れちゃうじゃないですか!?」 今度から気をつけて下さいね〜と迫力のない抗議をするロディをすっぱり無視し、挨拶も抜きにして本題に入る。 「ヒューゴさんにあげた薬、あれは何ですか?解毒剤は持っていますか?」 「ええと、背を伸ばす薬のことですか?あれは毒じゃないから解毒剤はありませんよ」 きょとんとして返すロディ。 クリスの背が伸びた記憶はない。例によって絶対騙されている、とルイスは確信した。 「……背を伸ばす以外に、どういう効果のある薬なんですか」 ニコニコと嬉しそうに魔法使いは答えた。 「あれは元々は男らしさを上げる薬なんです。筋力と瞬発力の増強に効果があって、興奮剤も少し入っています。男らしさが上がるんだから、背も伸びるってお師匠様が」 嘘だ。ルイスは額を押さえた。 ロディは少しも悪びれず説明を続けている。それはそうだろう。迷惑極まりないことに、彼は心にやましいことなど何ひとつないのだ。 「副作用は軽い催淫効果です」 「……!!!?」 ルイスは血相を変えて走り出し、そのためロディの説明の最後を聞きそびれた。 「でもこの薬、あんまり効果は長続きしないんです……」 |
第13話
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第14話 響いてきたのは板金鎧の立てる聞き慣れた金属音だった。それがいくつか集まってきて、扉の向こうで止まる。 「お二人は見つかったか?」 「いや……」 隙間からかすかに漏れてくる声もお馴染みのもの。ヒューゴとクリスは息を殺して聞き入っていた。 「たっ大変です!ロディを見つけたのですが……」 そこへもうひとつ、少し軽めの鎧の音が飛び込んできた。しばらくくぐもった音だけになり、そして――― 「さっ催淫効果ぁっっ!!?」 「ボルス卿、そんな大声で!騎士団の品位が疑われ……」 「そそそれでは今頃あの蛮族が!こっこともあろうにクリス様と!!不埒な行為に及んでいるやもしれぬということではないか!!!」 ボルスが言い切ると、一瞬場が静まり返り、それからいくつもの怒号が上がった。 「捜せ、捜すんだ!草の根を分けても捜さねば!!」 ヒューゴとクリスは顔を見合わせた。二人とも顔がこわばっている。 こんなところ見つかったらヒューゴが殺される。マジで。 「地下の方はおおかた捜してしまったぞ。船の方はまだだが……」 「そこの扉は?」 むきだしの背に冷たい汗が流れた。 |
第15話
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第16話 ボルスは熱愛する上司がしどけなく乱れたドレスの胸を押さえていることに気づいてしまい、激情のため顔を真っ赤に染めた。 「くっ……クリス様、な、なんというお姿に……!?あの蛮族め!!」 暗い倉庫の中でどうやらスカートの下に隠された少年には気づかれなかったらしい。クリスはほっとしたものの、問題はまだ目の前から消えていなかった。 「違うんだ、ボルス。私なら大丈夫だから、ヒューゴには乱暴するなよ」 「なんと!やはりあの蛮族めに不埒なことをされたのですね!?」 「違うって!ヒューゴは何もしていない」 「しかし落ちていたこの服は……!」 「そ、それはだな……私が脱がせたんだ!」 痛いほどの沈黙が落ち、ヒューゴはスカートの下で泣き出したい気分だった。自分の立場がどんどんヤバくなっている気がする。 おまけに、幸いにもボルスの目からは隠れているものの、不自然な体勢になっていてかなり苦しいのだ。すべらかで引き締まった太腿の感触が押し付けられてくるものだから、精神的にも危険極まりない。 お願いだから早く立ち去ってくれ、ボルスさん…… だが少年の願いなど知る由もない烈火の騎士はますますヒートアップしていた。 「あの薬ですね!?あの薬のせいでっ!い、今すぐ医者にお連れします!」 「い、いいから!薬ならもう抜けてるから!」 「しかし!!」 「うわー近寄るなーっっ」 伸ばされた腕を避けようと、なけなしの力で身を捩ったクリスの体重がもろにかかり、ヒューゴの背骨が限界を訴えた。 「……わぁっ!?」 突然自分の下で少年が体勢を変え、力の入らないクリスは耐え切れずに転がってしまった。 |
第17話
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第18話
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